第一話 夢

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「――いらっしゃいませ」  突如として響いた声は、高すぎず、低すぎず、ちょうど良い音程の声音だった。  慌てて振り返れば、カウンターの奥に小柄な姿があることに気づく。 長く艶やかな黒髪に、海のような青さに彩られた瞳。それらを持つ人物は、まだ幼さを残す少女だった。  どことなく、子供のようなあどけなさを残した雰囲気の、少女。  腕にモフモフとした小さな毛玉を抱いているが、果たしてあれはなんなのだろうか……。 「本日はどのようなご用件でしょうか?」  貼り付けられた笑み。  いわゆる営業スマイルを浮かべ、少女は問うてくる。 「このような寂れた地に、お一人でいらっしゃるお客など珍しい。何か急なご用ですか?」 「え?」  そこで気づいた。先ほどまで共にいた男がいなくなっていることに。
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