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「しかし、その逆はよくあります。ほら。クロの目は赤いので」
困ったような儚げな笑みを浮かべ、慣れた手つきでティーカップにあたたかなお茶を注いでいく少女。
件のクロは邪魔にならないように気を使っているのか、瓶の置かれていない棚の上で大きな欠伸をこぼしている。というかどうやってそこまで上った。
思わず心の中で鋭いツッコミをいれながら、渡されたティーカップを礼と共に受け取る。
「俺はあの子の赤い目、好きだけどな」
いつの間にか用意されていた簡素で小さな木製の椅子。それに腰掛け、真っ白な陶器のカップの縁に口を付けながら、俺は言った。
「ああいう目って、ほら、なんかかっこいいじゃん? 俺としては憧れの対象、みたいな……いや、決して厨二病などではないんだけどね!?」
「ふふっ」
口元を片手で隠し、楽しげに笑いをこぼす少女。小さな肩を堪えるように震わせていた彼女は、暫くするとふう、と一息ついてから礼を述べた。それは恐らく、クロを受け入れてくれた者への感謝、だろう。
それほどまでにあの子は世間に受け入れられない存在ということなのか……。
「……嫌な世の中だ」
「ええ、全く」
俺の呟きに同意してから、少女はスッと顔を上げた。カウンター越しに、彼女と目が合う。透き通った青色の瞳が、まるで全てを見透かしているようでゾクリとした。
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