3人が本棚に入れています
本棚に追加
「アリアーっ!これを持ってここから逃げるんだっ!!」
アリアと呼ばれた少女は、涙を瞳に沢山溢れさせボロボロと頬を伝って、木製の床に落としては染みを作っている。
「アリアっ!お願いっ!あなただけでもここから逃げて、生き延びて欲しいのっ!!」
だけど、アリアは首を横に振る。涙を左右に飛び散らせながら。
「い、いやっ!パパとママは!?」
幼いながらに、この状況が分かっているのだろう、アリアが水色のパジャマをギュッと握り締めていることから感情が読み取れる。
“パパとママは死んでしまう”
「アリアっ!分かるだろ!?もうパパとママは助からない!だけどお前には生きて欲しい!パパとママの最後のお願いなんだっ!頼むからっ!これを頼りに生きてくれっ!!」
悲痛な声で、必死に訴えるアリアの父は、震える手を握り締めて差し出す。
アリアは、見た事もない父の迫力に感情を圧し殺して、差し出された物を受け取ると無我夢中で家を飛び出した。
アリアの家は、小さな村にあって、周りは木々に囲まれた場所。
アリアは森の中に飛び込んで、とにかく走った。
どれくらい走っただろうか、暫く走った所で、木の根に足を捕られて転んでしまう。
アリアは泣いた。泣いて泣いて、それでも泣いて──・・
止まる気配のない涙を、泥だらけになった手で拭うと立ち上がって、振り返った。
そこには、炎が立ち上ぼり、夜だというのに夕焼けよりも赤く辺りを染めていた。
あと少し逃げ遅れていたら、アリアも助からなかっただろう。
アリアの不思議な物語は、こうして始まった───
最初のコメントを投稿しよう!