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アリアは、なるべく身を小さくしてメモに視線を落とすと、目的地へと足を進める。
歩けば歩く程、町は素敵なのに──・・
そんなことを思いながら、15分程歩くと煉瓦で造られた細い裏道に入る。
その通りには、煉瓦の壁のアパートや、こじんまりとしたカフェやBar等があって、アリアの目的地もその通りにあった。
建物がポツポツと少なくなってきた、一番奥の突き当たりに小さな一階建ての家。
手入れが行き届いていない煉瓦の壁には、所々ヒビが入っていて、木の蔓が伸びている。
花が植えられていたであろう花壇には、萎れた花が無残に散っていた。
「せっかく、素敵なお家なのに・・」
アリアは、そんな家をぐるっと見回してポツリと呟いた。
壁の真ん中にあるドアの前に立つと、ドアノブに手を掛けるけど、ガタッと音が鳴るだけでドアは開かない。
そこでアリアは、父に託されたもう一つの物を思い出す。
「────鍵だっ!」
アリアは、ポケットから鍵を取り出すと、差し込み口に入れて、それを回すとカチャッと音が鳴り、鍵が開いたということが確認できる。
そして、少しドキドキしながらアリアはドアを開けた。
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