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14
「レヴィ!も……いらないっ!」
重ねた互いの左手の薬指にはアルフォード家の家紋が彫られたリングが光っている。
先程から何度も口に運ばれるシャンパンのグラスを遠ざけようと、那音はレヴィの腕に抱かれたままもがいていた。
婚姻式は厳かに恙無く行われ、早々に新婚夫婦のために用意された部屋のソファで二人はじゃれ合っていた。
式の最中にレヴィの血を口にした那音は、それがまるで媚薬でもあるかのように体が火照るのを感じ、こうして密着しているだけでも疼き始めていた。
それを知ってか、レヴィはわざと焦らすようにシャンパンを勧めてくる。
出来ることならば口移しでもらいたいと願う那音を楽しそうに見つめている。
「最期の晩餐だぞ?いいのか?」
「――いらないっ」
顔をそむけながらも肩で荒い息を繰り返す那音をレヴィは力強い腕でぎゅっと抱きしめた。
すぐ近くで見る彼の顔に、息を呑むと同時に頬を赤く染めながらも見惚れている自分がいる。
「じゃあ、何が欲しいんだ?」
耳元で甘く囁かれ、那音の体がビクッと震えた。
ソファに押し倒され、上から見下ろしたレヴィのはだけたシャツからは筋肉質の白い胸板が見える。
ゴクリと喉を鳴らすが、那音はそんな自分を見られたくなくて再び顔をそむけた。
吐き出す息が熱い。息だけじゃなく体中が熱くてたまらない。
「――なぁ、那音。今、お前がどれだけ俺を誘っているか、自分で分かっているのか?さっきの血の交換が呼び水になって、貪欲に俺の血を求めている。この香り……めちゃくちゃにしたくなる」
那音は、自分が欲情して発している血の香りなど分からなかったが、いつもに増してレヴィの目に妖し気な光が宿っていることには気づいていた。
レヴィの長い指が那音の着ていたシャツのボタンを外し左右に開くと、白い首筋に浮かんだ赤い鎖の痣を撫でるように舌で舐めた。
小刻みに痙攣する体は那音自身ではもう、どうにも出来なかった。
時折肌にあたる硬い牙の感触にもうち震え、那音はレヴィの首に両腕を絡めた。
「俺を欲すれば欲するほど甘く香る。俺以外に知ることのない那音の香りだ……」
吐息交じりに囁くレヴィもまた、纏うバラの香りが一段と強くなっている。
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