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その表情はひどく妖艶で、男女問わず誰が見てもその場に跪きキスを乞うに違いなかった。 むろん、レヴィもその一人なのだが……。 「――もうお前は人間じゃない。バンパイア一族アルフォード公爵家夫人だ」 「夫人って……。俺は、男だよ?」 気怠げに体を起こす彼の背を支えたレヴィに手をかけて肩口に唇を寄せる。 自分と同じ感触の肌に何度もキスを繰り返して、赤い情痕を残しながら彼の背に両手を回した。 長く伸びた爪を食い込ませるほど力強く抱きついた那音は妖艶な目つきでレヴィを見上げた。 「――喉が渇いた。美味しいワインが飲みたい」 強請るような口調はまるで子猫が鳴くように愛らしい。 その瞳に見つめられればさすがのレヴィも腰砕けになってしまう。 それでも気丈に振る舞ってはみるが、これほど美しく愛らしい妻を娶ったという優越感には勝てそうにはなかった。 (つい甘やかしてしまいそうだな……) 自嘲気味に笑う彼を不思議そうな目で見上げる那音。レヴィはそんな自分を窘(たしな)めるように小さくため息をつきながら、彼の体を抱き寄せて自分の首筋へと導いた。 レヴィの首筋から甘く香る血管をすぐに見定めると、薄く色づいた唇を開いて、那音は生えたばかりの象牙色の牙を深く差し込んだ。 ゴクン……。 本当にワインのようだ。甘く口当たりのいいワインは心地よく酔わせてくれる。 レヴィの血を思う存分飲み、牙を引き抜いた那音は血で染まった赤い唇を舐めながらレヴィをベッドに押し倒した。 身長差はもちろんだが、筋肉質で体格にも差があり、力では決して勝つことが出来なかったはずの彼がいとも簡単にベッドに沈んだ。 これが那音の体の中で目覚めた始祖の血なのだろう。 仰向けになったレヴィの上に乗るような形で、形勢が逆転した。 「――何の遊びだ?」 少し驚きながらもレヴィは楽しそうに唇を綻ばせる。 「時間はまだ、ある?」 「ああ。十分すぎるほど」 「じゃあ……もう少し楽しみたいな」 那音は先程から欲情しているレヴィの楔を手で掴むと、わずかに腰を浮かして自らの蕾にあてがうとゆっくりと腰を下ろした。
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