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人間のフリをしていてもこれだけの効果があるのだから、本来の姿になったらどうなるのだろうと不安になる。 片手に資料を持ち、白衣をひるがえして廊下を歩いている途中で急にピタリと足を止めた。 正面から歩いてくる金髪に銀縁メガネの青年をじっと見据える。 白衣を纏い、首からは身分証明証が掛けられている。 「おう!姫(プリンセス)」 片手をあげて微笑む彼を見上げ、那音は眉間に皺を寄せた。 「――ここではその呼び方はやめてください。ルークさん」 「お前こそ、それやめろ。“さん”付けするな、気色悪い!――まったく、正式に非常勤の医師としてここに来たはいいが、忙しくてやってらんない。ホストやってる方が楽だったなぁ」 「敏腕の外科医が来ればどこの病院も頼りたくなる。ホストより健全だと思うけど?」 「お前が言うなっ。俺が辞めてからあの店の売上一気に落ちたんだぞ。レヴィから聞いてるだろ?」 「何となく……聞きました。あ、でもっ!今日から新しい子が入るみたいです。他の店でもかなり人気があった子みたいですよ?楽しみですねっ」 「なにが“楽しみですねっ”だ!――お前さぁ、人間やめたら性格も悪くなったんじゃねーの?レヴィもレヴィだ。毎晩毎晩、甘やかしやがって……。昨夜だってあんなイイ声を一晩中聞かされたんじゃ、眠れないっつうの!裏社会の支配者が今じゃ、新妻に骨抜きにされてるなんて知れたらマスコミのいいネタだぞ」 「あれ?夕べ、邸に来てたんですか?」 まるでたった今知ったと言わんばかりの那音の反応に、ルークは呆れて髪をかきあげると青い瞳で睨んだ。 非常勤とは言え、緊急の要請があれば否応なしに呼び出しがかかる。そんな中でやっと取れた久々のオフに、静かな場所でぐっすり眠れると思いたってレヴィの邸に行ったものの、激しい夫婦の営みの声に悩まされて眠れなかったようだ。 「おかげで睡眠不足。俺、機嫌悪いのっ!」 ガウウと低く唸って見せて、ルークは那音の頭をポンと叩いた。 「今度……あの店に付き合えよ。マスターも心配してたし。何よりお前に会いたいって言ってたぞ」
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