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再び眉根をきつく寄せ、目を細めた彼は低い声で言った。 「――どうしてそれを?」 「ノリスさんに聞いた。でもまさか……あの契約が婚姻の約束だったなんて知らなくて」 言ってからはっと息を呑んだ那音だったが時すでに遅しとはこのことだった。一体何のためにノリスがレヴィに内緒で話したのか、バレてしまった今では全く意味をなさない。 それなのに、レヴィは「余計な事を」とため息交じりに呟きながらも唇を綻ばせた。 「――生死を彷徨うほどの貧血状態の人間から血をもらうほど俺は鬼畜じゃない。それがお前であれば尚更だ。お前が無事ならば、それでいい……」 自分を犠牲にしても守られていると感じた那音は、哀し気な目でレヴィを見つめると、着ていたシルクの寝間着のボタンに手をかけて一つずつ外していった。 驚いて黙って見守るレヴィをよそに、すべてを外し終えると襟元を大きく開けた。 そして困惑の表情を浮かべるレヴィに向けて、白い首筋をわずかに傾けた。 「俺はもう、平気……だから」 那音の言葉に目を見開いたレヴィだったが、何気なく顔をそらして、聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声でボソリと呟いた。 「――だけでは……なる」 「え?うわっ!」 聞き返す間もなく那音はベッドに押し倒されていた。 枯れ木のような手で那音の手首を掴んだまま、レヴィが上に覆いかぶさるようにして唇を重ねた。 「んんっ!」 突然のキスで上手く息が出来ない。酸素を求めてわずかに開いた唇の隙間から冷たい舌が滑りこんできた。 歯列をなぞり、逃げようとする那音の舌を追いかけるようにして絡ませてくると、むせ返るようなバラの香りが広がっていく。 レヴィがキスを深くすればするほど、その香りは甘く淫靡なものへと変わっていく。 「ぅう……んっ……っ」 経験が少ない那音に抗うことなど出来るはずもなく、レヴィの舌に翻弄され腰にも脚にも力が入らない。 ただただ心地よく、ずっとこうしていたいと思うだけだ。 銀色の糸を纏わせながら唇を離したレヴィは那音の首筋に舌を這わす。 以前噛まれた場所が熱く火照り、そこから全身へと毒が回るように痺れはじめる。 「ぁぁあ……はぁ……はぁ……っ」 耳朶を甘噛みされ、背中が反り返る。 ゾクゾクと襲い掛かる快感を掴もうと、那音の体もレヴィを求め始めていた。
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