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「――誘ったのはお前だぞ?那音……」
「いやぁ……、レヴィ……っ……んぁあ」
「今の俺がお前の血を飲むだけで終われると思うのか?どれほどお前を欲し、どれほど愛しているか……。分からせてやるっ」
レヴィの硬く鋭い牙が那音の首筋の皮膚を破って食い込んでいく。
「あぁっ……」
背中がシーツから浮き上がるほど体をそらせ、深く穿たれた牙の熱さと快感に身を震わせた。
獣が獲物に食らいつくかのように激しく、啜りあげ、嚥下する喉の音が間近で聞こえ、その音でさえも那音の体を熱くさせていく。
那音の手首をしっかりと押さえこんでいた枯れ木のようなレヴィの手はいつしか元通りに戻っていた。
これが那音の血が持つ力なのだろう……。そこにはしなやかで美しいバンパイアの手があった。
長く伸びた爪も綺麗に研ぎ澄まされ、そっと触れただけでも傷ついてしまいそうな威力があった。
レヴィは、那音の恍惚の表情を見ながらゆっくりと焦らすように牙を引き抜くと、くっきりと浮き上がった赤い鎖の痣に何度もキスを繰り返した。
始祖の血を引く者に選ばれ、婚姻の約束を交わした花嫁にだけに出現する痣は、レヴィが那音を永遠に離さないと言う証だ。
しなやかな指先で赤く濡れた唇を拭う彼は、より妖艶さを増している。
「――戻った、の?」
息を荒らげて問うた那音に優しい微笑みで返すレヴィが再び唇を重ねようとした時だった。
部屋の入口のドアに気配を感じ、二人は訝しげに顔をあげた。
「――え~と。お取り込み中のところ申し訳ないが。ゴホンッ!――いつまで待たせる気だよ、レヴィ!」
ドア枠に凭れ、金色の髪を面倒くさそうにかきあげながら、イラついた表情を見せていたのはルークだった。
――が、その姿に目を見開いた那音はレイの肩を押しのけるようにして上体を起こした。
「あ……、あなたはっ!え??ルーク……さん?あれ……ちょっと待って……??」
髪はラフに崩されているが、銀縁の眼鏡に白衣という出で立ちには見覚えがあった。
病院内で、そしてあの更生施設で会った医師だと思っていた人物と瓜二つだったからだ。
「お、元気そうじゃん!」
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