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キッパリと言い切られ、とても断われる雰囲気ではないことは分かっていた。しかし、何より気になったのは杏美の安否だ。ノリスの話では命は取り留め、今は眠っていると聞いている。 那音は真っ直ぐにルークを見つめると、唇を震わせながら言った。 「杏美さんは……本当に助かるんですか?」 その真剣な眼差しにさすがのルークも動揺したのか視線をそらして体を起こした。 金色の髪を落ち着きなく何度も撫でながら、苦笑いを繰り返す。 「まぁ、正直なところやってみなきゃ分かんないんだけどな。今はその方法しか思いつかない」 「もし……失敗、とかしたら?俺の血を使うとどうなるんですか?」 「おいっ、人聞きの悪いことを言うなよ。それに彼女を実験材料にする気はないから。ミラードと一緒にするなよ……」 「あ、いえ……、そうじゃ、なくて……。そもそも杏美さんが襲われたのって俺のせいなんですよね?だから罪悪感……というか罪の呵責に耐えられるのかなって」 それまで黙って二人の話を聞いていたレヴィが手にしたガウンをそっと那音の肩にかけた。 ふわりとバラの香りが舞い、まるで彼に抱きしめられているかのような温もりが感じられた。 「――大丈夫だ」 見上げたレヴィの顔は、絶対的な自信に充ち溢れた余裕のあるものだった。 裏社会を、この国を統べる覇者である彼が言うのであれば、それは間違ってはいないのだろう。 「ただ……」 ふと、何かを思い出したかのようにルークが言葉を切った。 「一つ大きな問題がある!レヴィが那音の血を杏美に提供することを承諾するか、否かだ。決定権はお前にある。杏美の命を取り留めたのはお前だからな」  ルークはレヴィを見つめて、その答えを導き出そうとした。だが、予想していたよりもあっさりと返答が得られた。  独占欲の強いレヴィのことだ。きっと那音の血を提供するとなれば、いろいろと難癖をつけてくるに違いないと思っていた矢先の事に、ルークは拍子抜けしてしまった。 レヴィは「全く問題ない」と、小さく首を左右に振った。
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