第1章 ワケありのふたり。

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昨日はみなとみらいの帆の形をしたホテルに泊まって、夜景の見えるレストランで食事をした。 最初で最後の贅沢になるかもしれない。 これからは夜勤はしないつもりだし。お給料も減るだろう。 でもきっと大丈夫。知らない街でも、贅沢しなければ生活出来るだろう。 仕事先の最寄駅にスーツケースを持って降りる。 まだお昼前なのに、 なんでこんなに女学生が多いんだろう。 短いスカートに生足。校章のついたコートに紺の靴下。 賑やかなおしゃべり。 スマホを片手に持った女の子達はみんな垢抜けている。 切りすぎた前髪にちょっと触ってみる。 紺色のダウンに黒のパンツスーツは周りから浮いているかな? 駅のトイレに寄って、鏡を覗いて見る。 160センチ、50キロ。普通だ。特徴のない体つき。 童顔で、いつも幼く見られる。目尻が下がった二重の目。 どうやらタヌキに似ているらしく、子どもの頃はタヌキってからかわれた事もあった。 今は周りもオトナになったので、そんな風に言われる事はない。 少し茶色に染めた髪はショートボブにしたばかり、短い前髪が気になる。 北海道を出る前に空港で背中まであった髪を切った。 失恋したというか、婚約者の浮気で結婚は永遠に延期になった。
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