プロローグ『僕のことを好きになってください』

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 目の前の数字を見て、雨之宮凪は大きなため息を吐いた。  月刊少女ラブリー、2017年4月号、アンケート結果。  全23掲載作品中――23位。 『面白くない』 『絵は可愛いんだけど、話がつまらない』 『リアリティがない』  エトセトラエトセトラ。  辛辣な意見が続く。  それを見て、凪はまた大きく息を吐いた。 「せ、先生、そんなに落ち込まないでください!」  にこやかに元気づけようとしているのは、現役女子高生覆面漫画家・雨之宮凪の編集担当、御影咲間だ。爽やかな笑みを浮かべ、ガッツポーズをしている。  それが余計に――辛い。  凪はまた、息を吐く。 「ほら、ピンチこそチャンスに変えろと言うじゃないですか」 「御影さんは前向きですね……」  大学新卒23歳の若き青年はやる気に満ち満ちていて、それがまた、凪を落ち込ませる。未来ある人を、自分みたいな売れない少女漫画家の担当につけてしまって良いのだろうか。もっとやり甲斐のある、売れっ子の作家の担当につけて、仕事を覚えさせた方がいいんじゃないだろうかと常々思う。
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