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 鞄の中から手探りで携帯を取り出して画面に触れたその瞬間、前を見ていなかった俺はすぐそこまで来ていた人に気づかず左肩に鈍い痛みが走る。 「す、みません」  走る衝撃と共に雨に濡れた右手から携帯が滑りぬけて、派手な音を叩きだした。落ちた携帯は雨に濡れてか少しだけ地面を滑って路地の間を行ってしまった。  最悪だ。  よろけた俺に相手も小さく会釈をしてそのまま走さるのを横目で見てから、急く思いで携帯の元へと小走りした。 「…防水でよかった」  せめて何か救いはないだろうかと考えて漏れる言葉があまりにも小さすぎると呆れながら、気休め程度に服で拭いた携帯を鞄に突っ込んだ。  屈んだ身体を起こして急ごうとしたその時だった。俺の後ろで水が跳ねる音がしたと同時に、肌に触れる雨が止んだ。  あれ、どうして。  服も靴も濡れていたけれど、まだ肌に濡れる雨の感触は感じれたのか。ここでそんなことを考える自分に驚いていると、遮られた雨の中でどこか空気が変わったような、そんな気がした。 「大丈夫、ですか?」 響く雨の音が耳について離れないはずなのに、邪魔をしない声が鼓膜を揺らす。俺にかけられている声なのだろうか。緩やかに届く声に振り替えると、そこには一人の男の人が自身の傘へ俺を招き入れていた。
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