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 そこから小説家として世間で名が知れた存在になりました。というめでたい話ではないけれど何とかぎりぎりの生活を送れるようにはなっている。書く小説の全てがベストセラーで実写映画化にもなるなんて夢のような話は、俺にとってはまだ夢のまま。コラムを書かせてもらったり小説を何とか出させてもらい、たまに電車の広告の端に俺の名前が小さく載っているくらいだ。  ならば、今の仕事が苦痛なのかと聞かれれば俺は首を横に振る。けれども不安なことを切り捨てることができないのは、自分自身にいつも自信がないからだ。  こんな風に悩むことを繰り返して何度も自分が嫌になること。それなことばかり考えているけれど、朝は来るし締め切りだって止まることはない。  少しだけ休もう。そう思っていた俺を許さないというようにメールの着信音はいやに鼓膜を揺らしていた。 *** 「今から、ですか…」   今は何時だったろうか。カーテンの隙間からこっそり外を覗くと以外にも明るい。 「でも急ですよ」     
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