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締め切り当日に何とか原稿を出版社メールで送り終わり、さあ横になろうとした瞬間にかかってきた電話は俺の原稿を待っていた編集者からだった。担当編集者はできれば今から打ち合わせをしたいのだと言い、俺に出版社へ来いという連絡だった。
「メールとかじゃだめなんですか」
基本的にできればあまり外に出ることは避けたいと思っていても仕事の際はやむをえない。しかし、いつも俺が外へ出ることをあまり好んでないことを知っているはずなのにどうしてこんな急に。聞こえないように小さくため息をついていると、編集者は原稿を見ながら話をしたいからと一歩も引いてはくれない。
「せめて明日に。今疲れていて」
シャワーを浴びてそこからコーヒーでも飲んでもう今日は眠ってしまいたい。体にのしかかっているこの怠さは年々酷くなってるとしか思えない。だからせめて明日にと譲歩したつもりだったのだが、編集者はそれなら今から家に来るというのだから俺は珍しく声を上げてしまった。
「ちょっとそれは困ります。というか、今日はいつも以上に強引すぎじゃないですか。どうしてそんな急に」
さすがにやり過ぎだろうと言ってしまいたい気持ちを必死に堪えて額に手を当てると、編集者は三十分だけでいいと彼なりの譲歩案を提示した。
これ以上粘っていても状況が変わりそうな兆しもない。盛大に肩を落として今から二時間後に向かいますとだけ言って俺は電話を切った。
「強引すぎるだろう」
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