エピローグ

4/5
883人が本棚に入れています
本棚に追加
/133ページ
 先生の仕事の邪魔にならないように気を付けて勉強を始める。  放課後のひととき。1時間もいないけど、こうして先生のそばにいれるだけで嬉しい。  自然と緩んでしまう頬を叩いて、今日の授業でわからなかった部分の復習をする。  先生はノートパソコンで作業をしていてカタカタとキーを打つ音が響いてくる。  その音にさえほっとするような気分で勉強をしていて、すこしして打つ音が止まる。  僕はそのまま勉強をしていたけど先生の気配が静かになっている気がして顔を上げた。  途端に先生と目が合う。  片肘をついた先生がじっと僕を見ていて驚いた。  ど、どうしたんだろう。  いつの間にか見られていたから恥ずかしくて顔が熱くなる。 「せ、先生?」 「お前、真面目だよな」 「え?」  真面目? なにが?  意味が分からなくて呆けていたら先生の顔が近づいてきた。  びっくりして見ていたら僕の顔に影が落ちて唇に触れるもの。 「……ん」  突然のことに驚きしかないけど、僕の唇を吸って、中へはいってこようとする先生の舌に目を閉じて唇を少し開く。  絡みついてくる舌に持っていたシャープペンを握る手に力が入る。  準備室でふたりきりだけど学校なのに、いいのかな。  そう思うけど先生から与えられるキスを僕から止めるなんてできないし、もっと触れてほしいと思う気持ちのほうが大きい。  どれくらいなのか。一分も経ってないかもしれないけど僕にしてはとっても長く感じたキスが終わって離れていく。  ぼんやりと先生を見つめてると優しく頭を撫でられた。 「勉強の邪魔して悪かったな」 「……へ、え」  邪魔って、僕がここに来ることのほうが仕事の邪魔のはずなのに。  首を振ると先生はふっと優しく笑った。  その笑顔にドキドキしてもっともっと落ち着かない気分になる。  先生が僕以外に向ける笑顔と僕が見ることができる笑顔が違うものだって……この一週間で知ったから、見るたびドキドキして嬉しくなってしまうんだ。
/133ページ

最初のコメントを投稿しよう!