赤いヒール

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ガサガサと漁っているのは人っぽかった。ホームレスだろうか。この辺りは治安がいいはずなのに____そう思って俺は顔をしかめた。しかし、ホームレスとは何かが違う気がする。なにか、細身、そう、女みたいだ。 その女と思わしき人影の足元を見ると、赤いヒールを履いていた。なにかゾッとして、エントランスの方へ走った。 マンションのエレベーターに乗って、やっと一息ついた。なんで俺は逃げたんだ?と考えると高校生の時流行っていた都市伝説を思い出した。 赤いヒールの女。それは出会ってしまったら、世界が狂ったように感じるらしい、と。そんな漠然とした内容から推測をするのが流行った。自殺したくなるんじゃないかとか、全員が自分のことを狙っているように感じるらしいとか。 今のところ、自殺願望だとか世間に対する恐怖などは感じていない。 多分酔っ払った女がごみ捨て場を漁っていただとか、なにか間違えて捨ててしまって探しているだとかそういうことだろう。俺はその都市伝説から無意識に反応してしまったと納得させた。
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