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「…俺、絶対に要救助者を一人で救助しに行くなって言ったよな?」
ベテランライフセーバー達の姿がある室内。そこで小板柚貴は小声でハイという言葉を発した。
その時、柚貴の上司でベテランライフセーバーでもある海堂海司にお灸をすえられ始めた柚貴は十数分前、海司と共に砂浜を歩いていた。
潮風が時折、頬を撫でる。一般的な海水浴場…と言うと大半の人が連想する…であろうそこで海司は柚貴にパトロールがてら海水浴場の施設案内をしている。
―――黒真珠の様な瞳。黒い絹糸のような髪の毛。引き締まった中肉中背の体。
柚貴の顔は美貌…と言っても過言ではないモノで性格は一途。鈍感で独身の柚貴は自分はネコだと自覚しているゲイ。海好きで得意のクロールを活かせそう…という理由でライフセーバーになった柚貴は海司の引き締まった体や美貌、黒曜石の様な瞳を時折みながらパトロールをしている。
…ああ、ライ腐セーバーになってよかった…。
柚貴がそう思いながら視線を移した直後、柚貴の視界に溺れている人の姿が入った。
「!ぁ…」その時、柚貴の脳裏に今一人で要救助者を救助に行き助けたら海司達に一目置かれるかも…という考えが浮かんだ。
柚貴は柚貴も要救助者もいない方向をみている海司を一瞥するとすぐ要救助者がいる海に向かって走り始めた。その時、盗撮をしているっぽい人の姿を見ていた海司はほどなくして柚貴が側にいない事に気付い。
「?……あっあのバカッ」海を泳いでいる柚貴とその先にいる要救助者を見た直後、そう言い柚貴の後を追い始めた海司は砂浜をまるで普通の道路を走っているかのように走り海につくと物凄い速さで泳ぎ始めた。
一方その頃、要救助者の元に到着した柚貴はドヤ顔で「今、助けますから」という言葉を口にしようとした。
その時、パニックになっていた要救助者が「しッしっ死にたくないっっ」と言いながら柚貴にしがみついた。
「わっちょっちょっと…っ」柚貴は要救助者にしがみつかれ激しく動揺した。
「おっ落ちついてくださ…っ」柚貴は言葉の力を使って要救助者を落ち着かせようとした。が、酸欠かストレスで半狂乱になっている要救助者は落ち着きを取り戻さない。
こっこっこのままじゃ、オレまで…。柚貴が死の恐怖を感じ始めた直後、「大丈夫です」という落ちついた男の声が柚貴の鼓膜を揺らした。
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