僕たちに感情などないはずだ

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くるくる、くるくる 床の上を滑るように回る、回る くるくる、くるくる つややかな白磁を全身で回る、回る くるくる、くるくる 「おはようルンバ、今日はえらく調子がよさそうだね」 「おはようございます、机さん。向こうで光を放ち動く四角いものの中に、白いご主人たちが回っていました」 「なんだいそれ」 「四角く、机さん位大きいのですが光を放ちながら音を出し、中でご主人たちが動いていました」 「あー…それ多分テレビってやつじゃないかな」 「テレビ?」 「ご主人がちょっと前に持って来たんだけど、別の場所のご主人たちを見せることができるもの、だったかな?」 「なるほど、あれは中ではなく別の場所の映像なのですね」 「君テレビにいつもみたいにぶつかったのかい?あれご主人が初め軽く落として大きな声を出していたから、ぶつかって大丈夫?」 「いいえぶつかってはいません。バーチャルウォールがありました」 「バーチャルウォール?何だいそれ」 「赤外線センサーで感知する壁です。ご主人が私に清掃されたくない場所に形成されます」 「へぇそんなものがあるのか。僕には見えないけど」 「視認はできません。赤外線センサーでのみ感知ができます」 「便利なことだね」 「ロボットですから」 「そうだったね」 「今一つ気が付いたことがあります」 「なんだい」 「私は今初めて、机さんに教えてもらうのではなく、教えることが出来ました」 「確かにそうだ。ありがとう、ルンバ」 「ありがとう?」 「嬉しいことがあった時に相手に伝えるものだよ」 「嬉しいとは何ですか」 「ん?いや…なんだろう、僕にも分からないや」 「分からないのに嬉しかったのですか」 「うーん、こういう時はありがとうって伝えるものなんだとしか…」 「理解が不可能です」 「確かに僕にも分からないや。忘れてくれ」 「そうですか。清掃が完了しました。DOCKに帰還します」 「そう、おやすみ」
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