僕たちに感情などないはずだ

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「最近、猫さんの毛が多く落ちています」 「もうすぐ冬ってやつだからだろうね」 「冬?」 「気温が下がる期間だよ。僕は少しだけ縮んでしまうんだ」 「私には視認できませんが」 「ほんの少しだけさ。僕は木製だからね。木は気温でほんの少し変化してしまうんだ」 「理解が困難です」 「まぁ僕以外誰も気づかないから構わないよ」 「机さんは縮んでも傷つかないのですか」 「特に問題ないよ。そういうものだからね」 「そうですか」 何故か少しだけ内部がほんのり熱を持った 一瞬滞ったプログラムが帯びた熱によってスムーズになっていく バグだろうか 「どうかしたの」 「いいえ、問題ありません。DOCKに帰還します」 「おやすみ、ルンバ」 おやすみ おやすみとは何だろう 「猫さんにまだ逃げられます…」 「君が来てもう結構たつのにまだ慣れてくれないらしいね」 「なぜでしょうか」 「君が動くと大きな音がするからじゃないかな」 「それは回避不可能です」 「君が起きるといつも猫さんは僕の上に飛び乗るんだから。いつか傷がつかないか心配だよ」 「猫さんが上に上がると傷がつくのですか」 「猫さんの足には小さいけど固いものがついてるからね。日頃は出してないみたいだけど、時々ものを荒らしているんだ」 「それは傷がつきそうですね」 「全くだよ」 机さんの上に上がる猫さんの姿は私には見えない 「…机さんの上」 「ん?どうかしたのかい」 「いえ、私は床の上しか見えないので。机さんはもっと上が見えるんですよね」 「まぁそうだね」 「少し、うらやましいなと」 「そうかい?僕からすれば部屋を動き回れる君の方がうらやましいけどね」 「そうですか」 「まぁご主人たちにはどちらもできるんだけどね」 「ご主人たちは特別ですから」 「ま、そういう事だね」 「机さんはご主人たちになりたいですか」 「さぁ、そんなこと分からないさ」 「そうですね。ではDOCKに帰還します」 「おやすみ、ルンバ」
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