天藍のえすえす

「高校生」「スニーカー」「駅」

それは懐かしむべきだと思った。だって苦しいから。

「久しぶりですね」

「いつ以来？」

「高校生」

あたしは横目でその人を見た。薄い唇。笑うと悪役みたいになる。その癖は今でも変わらないらしく、片方の唇だけを釣り上げる笑い方をする。

「お前がパンプス履いてるなんて、変なの」

「……先輩だって、スーツ似合ってませんよ」

胃液のように苦い恋だった。先輩にはかわいい彼女がいて、あたしはそれをいつも反対側の駅のホームから見つめるしかなかった。

もはやスニーカーなんて遠い過去だ。ただ、先輩の左の薬指を見たら、あの苦さは今でも変わらないままだった。

天藍さんの今日のお題は
「高校生」「スニーカー」「駅」です
#今日の三題噺のお題 https://shindanmaker.com/681566