Ⅳ.春雷

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もう少しで大通公園と言う所で 始めて赤信号に引っかかった。 見知らぬたくさんの人々と信号待ちをしながら もうこのままでもいいのかもしれないとも思ったりする。 業務上の関わりがなければ同じシステム部の中でも 話をする機会がない同僚など山ほどいる。 少しの間は辛いかもしれないが 蒼井ともそうなれればずっと楽かもしれない。 遠く離れていた時でさえ忘れられずにいたのに毎日顔を合わせねばならない環境では 楽になれるはずもなく、かなり無理のある現実逃避だ。 いっそのこと全てを水に流せればいいのに。 そう願ってはみても、こんがらがったいろいろな思いはそう簡単に解けてはくれない。 まさに八方ふさがりである。
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