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青信号に変わり立ち止まっていた人々がまた流れだした。
真里も流れに乗り歩き出そうとした時だった。
「真里っ!」
不意に名前を呼ばれ、反射的に振り返る。
「よかった・・・。」
真里に駆け寄ってホッとしたように呟いたのは黒革のビジネスバッグを手にした蒼井だった。
蒼井は肩で息をしながら言った。
「こんなに歩くの早かったか?あと少し出るのが遅かったら追いつけなかったかもな。」
呆然と蒼井を見つめていた真里は自分が彼に腹を立てていたことを思い出しくるりと踵を返した。
「な、何か用?」
既に点滅を始めた青信号を足早に渡りながら
真里は蒼井を一瞥もせず不機嫌そうに聞いた。
蒼井は困惑気味にそんな真里の横顔を見つめる。
「俺、何か気に障るようなことしたか?」
「別に。」
「別に、じゃないだろ。
昨日から明らかに俺のこと避けてるし。」
「気のせいじゃない?それにそうだったとしても蒼井くんにとってはどうでもいいことでしょ?」
「そんなことない。」
やけに力のこもった声だった。
真里は絶対に見まいと思っていた
蒼井の顔をつい見てしまう。
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