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対する蒼井はしきりに目を瞬かせながら黙って話を聞いていた。
それからしばらくの間視線を宙に泳がせて何か考えていたが「そうだよなぁ。」とボソリと独り言を言ってから再び真里を見つめた。
「真里が誤解するのも無理ないよな。だけど俺、隠し事なんてしてないよ。子ども達を遊びに連れてくのは徹がいた時からしてたことなんだ。」
「そ、そうなの・・・?」
さっきまでの勢いはどこへやら。
真里は拍子抜けしたように聞き返した。
「ああ。優が歩き出して外で遊べるようになった頃には彼女のお腹にはもう俊がいたんだ。だから休みの日に徹だけで優を遊びに連れてくことが多くてたいてい俺も駆り出された。まぁ、子どもの時から徹とはいつも一緒だったしそこに優が加わっただけで俺にとっては特別なことじゃなかった。それに徹1人にヨチヨチ歩きの優を任せるなんて危なっかしくてさ。」
確かに、と真里は納得する。
人混みの中、蒼井を見つけた嬉しさの余り家族を置き忘れてくるような徹に安心して幼児を任せられる訳がない。
蒼井は目尻を下げて話を続ける。
「子ども達とも赤ん坊の時からしょっちゅう顔合わせてたせいか懐いてはくれてるんだ。
今は徹がいない分、なるべく相手をしてやりたいと思ってる。俺も楽しいから、いい息抜きになるし。」
「じゃあ、あの女性とは・・・?」
真里がおずおずと聞くと蒼井はきっぱりと言った。
「前にも言った通りだよ。俺が彼女に会うのは子ども達の送迎の時と徹の法要と徹の実家に遊びに行った時に彼女達も来てたらって程度だ。2人きりで会ったことなんて一度もないよ。それにもし彼女とそんなことになってたら真里にはちゃんと報告するよ。」
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