Ⅳ.春雷

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真里は俯いて瞳を伏せた。 大きな溜息と共に言葉が漏れる。 「もう嫌になっちゃうよ・・・。」 「えっ?」 その声がよく聞き取れなかったらしく蒼井は首を傾げた。 そんな彼に真里は苦悶の表情を向けてどうしようもない歯痒さを爆発させる。 「蒼井くんの気持ちが全然わからない。この状況で、どうしてあの女性(ひと)に何も伝えてないの?何で未だに宙ぶらりんのままなの?そんなんじゃ私はどうすればいいのかわかんないよ!」 蒼井はただ戸惑うばかりだ。 真里がなぜ怒っているのかさっぱりわからない。 「どうしたんだ・・・?」 蒼井が真里を案じるように尋ねた。 真里は唇を噛み締めて、彼の顔をじっと見据えた。 心配そうに自分を見つめる優しげな瞳が 今は余計に真里の胸を締め付ける。 切なくて、切なくて、あまりに苦しい。 「そんな目で見ないでよ・・・。お願いだから・・・もう忘れさせてよ・・・。」 「真里・・・?」 「蒼井くんが・・・好きなの・・・。」 震える声で告げられた真里の言葉に蒼井は目を見開いた。 「えっ・・・?」 「ずっと好きで、忘れられなくて、ずっと会いたかった・・・。知ってたわよ、蒼井くんに好きな人がいることなんて。付き合う前から知ってたし、それでもよかった。私だけを見てくれなくてもそばにいられるだけでよかった。ずっとあの頃に戻りたくて・・・今だってそう思ってる・・・。」
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