Ⅳ.春雷

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いつの間にか堪えきれなくなったように 空から大粒の雨がポツポツと落ち始めていた。 真里達の様子など気に留める事なく 人々は慌てて地下へ駆け込む。 雨は瞬く間に激しさを増し 街と2人を容赦なく濡らしていく。 もっと降ればいい。 真里は心のどこかでそう思った。 そうすれば涙が頬に零れても 誰にも気づかれずに済むから。 雨に打たれながら、真里は悲しげに続ける。 「でも私なんかいらないよね。 今の蒼井くんにはもう必要ないもんね・・・。」 「違う・・・。」 「何も聞きたくない!もう追いかけて来ないで!」 引き止めようとする蒼井を振り切って 真里は地下への入口へ走り込んだ。 濡れた前髪から雨の雫が頬を伝って落ちる。 拭うこともせずに真里は階段を駆け下りた。
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