Ⅳ.春雷

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全ては時が解決してくれると言うが。 時は私には少しも優しくないらしい。 ずぶ濡れのまま自宅のソファに座り込み 真里はそんなことを考えていた。 7年もの時間があったと言うのに 何ひとつ解決していない。 それどころか事態は悪化の一途を辿るばかりだ。 真里が蒼井と付き合えたのは 言うまでもなく あの女性(ひと)が徹のものだったから。 徹がいたからこそ成立していたのだ。 しかし徹はもういない。 今の状況で、蒼井は二度とよそ見などしないだろう。 もちろんあの女性(ひと)が 蒼井の気持ちを受け入れない可能性もある。 蒼井の思いが叶わない場合は ある意味、真里にとっては チャンスと言えるのかもしれない。 だがその結果がわかるのはいつなのか? 自分はいつまで待てばいいのか? つまりは。 二択を突きつけられているのだ。 ハッピーエンドなどあり得ないのを承知で 思いを告げて玉砕するか。 いつわかるとも知れぬ蒼井の恋の結末を 鬱々としながらただ黙って待つのか。 自分はこの選択をする為に 札幌に呼び戻されたのかもしれないとさえ 思えてくる。 きっとこの不毛な恋を いいかげん終わらせろと言うことなのだ。 そして真里は望まぬまま、結局は玉砕する道を選んだ。 それが正解だったのかは誰にもわからない。
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