Ⅳ.春雷

16/63
前へ
/185ページ
次へ
喜びに満ちる時も苦悩に沈む時も 時間は冷酷なまでに淡々と流れていく。 誰しも幸せな日々のみに留まることは許されず人生の所々で必ず幾度かは分岐点に立たねばならない。 福岡へ行くか、否か。 まさに今、分岐点に立つ真里は 日が移ろう毎に溜息の数を重ねるばかりだ。 蒼井のそばにいたい。 自分の気持ちははっきりしている。 果たして蒼井はどう思っているのだろう? もしも彼が望んでくれるなら迷うことなく札幌に残る。 もちろん現段階でそれらしい素振りは全くない。 あまりに普段通り過ぎて何だか寂しい。 付き合い始めてから今日までの2年弱の間で 自分は蒼井にとって少しは大切な存在になれたのだろうか? それとも未だに誰かから目を逸らす為に 自分と一緒にいるのだろうか? もしそうなら私が札幌に残ることはただ重いだけ? 自分自身のことなのに真里は蒼井の気持ちばかりを慮ってしまう。
/185ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加