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真里は体を起こして高山を見上げた。
「高山くんてどう見てもただのタラシなのに
ホントはすごいのねぇ。」
「たらしってのはともかく
後半はもっと大声で言っていいぞ。」
「調子に乗るから二度と言わない。」
真里はプイと横を向く。
「俺様にそんな口を叩くの
お前と宮崎くらいなもんだぞ。
案外、お前ら相性いいかもな。」
「冗談はやめてくれる?6歳も年下よ。」
「そんな若者に言い寄られるなんて
そうあることじゃないぜ?
ちょっとぐらい試してみたらどうだ?」
「バカ言わないで。もーこの話はやめやめ。
飲み物買ってこようっと。」
「あ、待て。ほらよ。」
立ち上がった真里の前に高山が
500ミリリットルのペットボトルを差し出した。
甘さ控えめのカフェオレ。
真里が買おうと思っていたドリンクだ。
「蒼井から差し入れ。
好きだったはずだからって。」
「・・・ありがとう。」
「蒼井に伝えとく。
山野が戻り次第ここに来させるから適当に休憩して
もう少し頑張ってくれ。では健闘を祈る。」
高山はそう言い置いて出ていった。
真里はゆっくりと椅子に腰を下ろし
カフェオレを見つめた。
自分の好みを蒼井が覚えていてくれたことが
どうしようもなく嬉しい。
でも。
勘違いしてはいけない、と自らに言い聞かせる。
蒼井は仕事の上では誰にでも平等に厳しく
それ以外の時は分け隔てなく優しい。
これは同僚に対する心遣いで
それ以上の意味はない。
自分は恋愛対象としては
とっくに終わった女なのだ。
そんなことはわかってる。
わかってる・・・けど。
もう一度だけ、夢を見てはいけないだろうか?
それは許されないことだろうか?
真里はカフェオレのボトルを両手で包んだまま
しばらく動けずにいた。
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