I.再会

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本格的な季節の変わり目は、6月半ばに行われる 北海道神宮祭が終わってから、と言う事である。 地下鉄大通駅から地上に出ると 4丁目通りの奥にJR札幌駅が見えた。 地下歩行空間の開通により 冷たい風に当たらずとも札幌駅まで 行けるのだが、真里は久々の街並を 眺めながら歩くことを選んだ。 新しいビルや改装されたビルが いくつか混ざってはいるが 通り過ぎる街並はあまり変わっていない。 雪の季節はうんざりすることもあるが 真里はこの街がとても好きだった。 またここで暮らせることは素直に嬉しい。 札幌駅にほど近いひとつのビルの前で、 真里は足を止めた。 そのビルは3階建ての 低層階と25階の高層階が逆L字型に並んでいる。 低層階の壁面はガラス張りになっていて 晴れ渡る空からの光を反射し 眩いばかりに輝いている。 目を細めて一度最上階を見やり 正面の入口から足を踏み入れる。 商業ビルの低層階には たくさんのテナントや飲食店があり 1階の広いフロアには昼食を終えて オフィスへ戻るサラリーマンやOL ランチ目的の買い物客など たくさんの人々が行き交う。 真里は社員証をつけた人々に紛れて 商業スペースのエスカレーターや エレベーターを通り過ぎ 更に奥にある 開け放たれた硬質ガラスの大きな扉を抜けた。     
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