III.残夢

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大通駅で乗り換え 札幌駅直結の複合商業施設の7階にある シネマコンプレックスを目指す。 まずは観る映画を決めてチケットを買う為だ。 「どれを観ようか?」 現在、公開中の映画の一覧を見ながら蒼井が尋ねた。 「これ!これ観たいっ!」 真里は瞳を輝かせてとある映画を指さした。 題名を見た蒼井の目が点になる。 それはかなり凄惨な内容らしい スプラッタホラーだったからだ。 「こ、こういうのが好きなんだ。」 「うん!このシリーズすごくおもしろいの。 でも続き物じゃないから これだけ観ても楽しめると思う。」 「楽しめる・・・?」 蒼井が引きつった微妙な笑いを浮かべた。 それに気づき、真里は慌てて言う。 「でも蒼井くんが嫌だったら違う映画でもいいよ。」 「でも・・・真里はこれが観たいんだろ?」 「うん、まぁね。」 「じゃあ、いいよ。大丈夫。 別に俺が喰われるわけじゃないし。」 蒼井は自分に言い聞かせるように呟き 午後1時20分から上映分のチケットを買ってくれた。 「ありがとう。何か・・・ごめんね。」 「謝ることないよ。 それより初デートでこの映画を観たがるところが 真里らしくて笑う。」 「どう言う意味よ?」 真里は蒼井をジロリと睨んだ。 「真里ってさ、いい感じに意表をついてくるんだよなぁ。 一緒にいると次は何をしでかすかワクワクする。」 「し、しでかすって何よ! もう!いつも人を子ども扱いしてぇ。」 そう言って頬を膨らませはしたが 蒼井があまりにも楽しそうに笑うので 何だか嬉しくなってしまう。
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