III.残夢

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それから2人は 先に昼食を済ませることにした。 ハンバーグを食べたいと言う真里のリクエストに応えて 蒼井が札幌駅北口付近にある 小洒落たレストランに連れていってくれた。 鉄板の上でジュウジュウと音を立てる ハンバーグをひと口頬張ると 肉汁が溢れ出て火傷しそうになったがその味は絶品だった。 いろいろな話をしながらゆっくりと食事を楽しみ その後は真っ直ぐ映画館に行った。 ドリンクとキャラメルポープコーンを買い スクリーン11の指定席に座ると程なく映画が始まった。 それは評判通り凄まじい映像の連続で 極度のスプラッタホラー好き以外は 目を背けたくなるような作品だった。 「すごく面白かったぁ。 前に観たのより数段よかったわ。 あそこの場面でさぁ~。」 映画を見終えて 嬉々として盛り上がる真里に対して 蒼井は青ざめてぐったりしている。 「頼む、思い出させないでくれ。」 真里はニンマリとした。 「蒼井くんにも苦手なモノがあるんだね。」 「苦手とかそう言う問題じゃないよ。 いくらスプラッタとは言えやり過ぎだろ? あんなに血ばっかり見せられたら こっちが貧血になりそうだ。」 「そうかなぁ? 血の量で言えばこの作品は全然たいしたことないよ。 だって前に観たのはね・・・。」 「ストップ。今は聞くの遠慮しとく。」 「あら、残念。やっぱり違うの見ればよかったね。」 「いや、俺が大丈夫って言ったんだから それはいいんだけど・・・。 でも今日はもう肉は食えそうにない。」 「意外と繊細なのね。」 真里がクスクス笑うと 蒼井はまだ血の気の戻らない顔に苦笑いを浮かべた・・・。
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