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振り向くと浅黒い肌をした高山修二が
ベビーフェイスの後輩を従えて
こちらへと歩いてくる。
高山は蒼井に勝るとも劣らない二枚目で
身長は蒼井より5~6センチ
態度は2倍、いや3倍でかい男だ。
歯に衣着せぬ物言で
納得がいかなければ先輩だろうが
上司だろうがそう簡単には折れない。
物腰の柔らかい蒼井とは対照的で
彼らは水と油のように思えるが
不思議とウマが合い
新人研修の頃からつるんでいる。
その後、真里を含めた5人が
システム部へ配属された訳だが
高山と蒼井の仕事ぶりは
新人の頃から抜きん出ており
いつしか社内では二人のことを
[我が社のツートップ]と呼ぶようになっていた。
「久しぶり。」
そう言いつつ高山に手を振った真里に
ダッシュで駆け寄ったのは
なぜかベビーフェイスの後輩くんだった。
後輩くんはスマホを差し出しながら言った。
「よろしければID交換お願いします!
更によろしければ付き合って下さい??」
「え・・・?」
きょとんとして、真里が聞く。
「あなた、誰?」
後輩くんは真剣な面持ちで答えた。
「失礼しました。
僕は宮崎敬吾、将来有望な29歳です。
一目惚れです!よろしくお願いします??」
「う~ん・・・。スピーディーで
ストレート、なかなか面白い
アプローチではあるけど
年下には興味ないの。ごめんね。」
「そう言わずに!お試しだけでも!」
食い下がる宮崎の背後から
置いてきぼりをくらった高山が
ヘッドロックをきめる。
「宮崎!てめぇが真里を口説くなんざ
百万年早いっ!」
「うぅーっ・・・高山さん、離して下さいよ!
百万年なんて僕の愛で
あっという間に飛び越えてみせますっ!」
「まだほざくか、この小童が!」
高山は宮崎を
オフィスへ引きづりこみながら提案する。
「蒼井!今日の夜、昔のメンツでひと足先に
真里の歓迎会やろうぜ!もちろん宮崎はハブで。」
「何でですか??僕も仲間に入れて下さいよ!」
宮崎は必死に高山の腕を振りほどこうとするが
なかなか思うようにいかない。
「お前、昔のメンツじゃないだろーが。」
「そんなこと関係ありません!
僕も行きますから!絶対に行きますから!
助けてぇ、蒼井さん・・・真里さーん・・・。」
二人の姿はオフィスの中に消え
宮崎の声だけが断末魔の叫びのように悲しく響く。
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