III.残夢

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「真里さん、おはようございます!」 どんなに遠くからでも 真里への挨拶を決して欠かさないのは 言わずと知れた宮崎くんである。 今日は真里の傍らまで来て つぶらな瞳をキラキラさせて 真里からの挨拶を待っている。 まるで主人から撫でて貰うのを じっと待っている仔犬のようである。 こういう健気なところはカワイイ。 お姉様社員にウケがいいのも納得だ。 「おはよう。相変わらず元気ね。」 「はい、お陰様で!」 嬉しそうに言ってから 宮崎は真里の顔をまじまじと見つめて 急に表情を曇らせた。 「あの、何か困ったことでもありました? 僕でよければ相談にのりますよ?」 真里は絶句する。 みんな、私の心中察し過ぎ! と言うか、私の顔って どんだけ感情露わになってるのよ? 真里は頭痛を覚えつつ同じ答えを繰り返す。 「大丈夫、月曜日だから怠いだけよ。」 「そうですかぁ?」 「ええ、本当に。」 「もし僕にできることがあったら何でも言って下さいね。 愛の力で解決してみせますから!」 「あ、ありがとう・・・。」 真里の苦笑を物ともせず宮崎は満足気だ。 「頼もしいじゃねぇか。」 2人のやり取りを聞いていないようで しっかりと聞いていた高山が鼻で笑いながら続ける。 「だがまずは自分の事を解決しろや。 大事な書類が1枚足りないって蒼井がお前を探してたぞ。」 「マジですか!?早く教えて下さいよっ。」 宮崎は慌てて蒼井の席へ走っていった。 蒼井は既に席に戻っており 宮崎に書類を見せ、コピー機を指差しつつ 何やら話をしている。 怒っているわけではないが コピー機に残ったままだったから 気をつけるように、と言うところだろうか。 宮崎と話し終えた蒼井は 今度は違う部下と仕事の打ち合わせを始めたようだ。
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