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真里はつい蒼井の姿に見入ってしまったが
ハッと我に返り机上に視線を落とした。
蒼井とはしばらく距離を置くつもりだ。
どうしても今までのように接する気になれない。
極力、視界にも入れない。
入れてやるもんかっ!
それにみんなは自分の事を心配して声をかけてくれるのに
蒼井は気にしてる様子もない。
どうせ私のことなんて眼中にないもんね。
どうでもいいんだもんね。
すっかり拗ねてしまい大人気など微塵もない。
始業時間を迎えると
いつもの如く週始めの電話対応で少しバタバタはしたが
真里のチームは高山が言っていたように
着手予定の案件が延期になった為
比較的のんびりとした雰囲気だった。
そんな中、真里は脇目もふらず仕事に没頭した。
とりあえず今は蒼井と違うチームで
本当によかったと思う。
最低限の挨拶さえすれば
その他は一切関わらずに済むからだ。
黙々と仕事をこなしていると
午前中はあっという間に終わった。
高山が胸ポケットにスマホをしまいながら
声をかけてきた。
「真里、昼飯行こうぜ。
今日は蒼井達も一緒に行けそうだぞ。」
「私はいい。行ってらっしゃい。」
山野が残してくれた引き継ぎノートを
読みながら、真里はきっぱりと言った。
「メシ食わねぇのか?」
「あまり食欲ないの。
軽く食べる物は持ってきてるから。」
「真里が食欲ないってのは気味の悪い話だな。」
いつもながらの高山の物言いに
真里はイラッとして声を荒げる。
「気味が悪いって何よ?
私にだってたまにはそういう時もあるんですっ!」
「おー、怖っ。
まだまだご機嫌真っ直ぐにはほど遠いみてぇだな。
んじゃ、行ってくるわ。」
高山は手をひらひらさせながら言うと
蒼井達の方へ歩いていった。
蒼井と宮崎は彼から話を聞いたのか
一度、真里の方へ視線を投げたが
そのまま3人で廊下へ出て行った。
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