III.残夢

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翌日の昼休み。 高山の姿はいつもの定食屋ではなく その2軒隣の蕎麦屋にあった。 蒼井は外出中、宮崎のことは探しもせず 真里は昨日と同様に 放っておいてオーラを漂わせていたので 声をかけるのをやめた。 今日は他の誰かを誘う気にもなれず ましてや経理シスターズにでも捕まったら面倒くさいので とっとと1人で地下に降りてきたのである。 早めに店に入ったお陰で 一番奥の2人掛けの席を確保できた。 入口に近い席は客が入れ替わり立ち代りで 気忙しいが、奥の方は比較的動きが少なく 意外と落ち着くのだ。 スマホを相手にカツ丼セットを 食べ終えようとしていた頃 いらっしゃいませと言う店員の声が聞こえた。 いつもなら気にも止めないのだが 今日は何か予感めいたものを感じてふと顔を上げる。 常にハイテンションなあの男が 高山を見てニッーと笑った。
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