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秋風が吹く頃、退院して義手にも慣れたマサキは、久々に小学校へ登校した。
独りぼっちで黙々と歩き、あの事故が起きた横断歩道を渡りかけたとき、
誰かに右手を握られた。
驚いて顔を上げるが、そこには誰もいない。
それでも、
義手ではなく、かつてそこにあったはずの自分の右手を、
小さく冷たい掌がきゅっと握りしめていた。
(ああ……ミホの手だ)
マサキは嬉しくなってニッコリ笑った。
義手の右手を大きく振り、声を上げて歌いながら、
2人で手をつないで、遠い学校を目指した。
<完>
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