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 私はテルテル坊主だ。  名前はない。  きっとこれからも付けられることはないだろう。  彼にとって、私はそこまで価値を抱ける持ち物ではない。  部屋の隅、窓枠の上、そこに吊り下げられている、ちり紙と輪ゴムでできた紙人形、それが私だ。  ここから見える空はいつも雨だ。ビルの谷間にしか見えない空はとても狭く、使い古して黒ずんだ雑巾のよう。水を吸わずに、すぐに吐き出す駄目な雑巾。  私はただの紙人形だ。  けれど、明日天気にしておくれと、彼は私を通して天へと祈る。  彼は人だ。  私は人というものを、彼とその両親しか知らないけれど、人がどういう生き物であるかは知っているつもりだ。  人は、祈る生き物だ。  時には神棚に、時には仏壇に、時には天に、時には人に向って、彼らは祈る。  祈りは、特別な行いだ。  祈りは、いつも誰かのためにある。誰かの幸せのため、治癒のため、贖罪のため、そして時には誰かを許すために、人は祈る。  人間以外の生き物が何かに祈ることはない。  蛙は羽虫が来るよう祈らず、蝸牛はおいしい葉っぱが見つかるようにと祈りはしない。  それは、彼らが祈ることの無意味さを知っているからだ。     
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