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 祈ろうが祈るまいが、生き残るには自分がどうにかしなければいけない。  そしてどうにもならないものはどうにもならないということを、彼らは本能から知っている。  だから祈りは、人と人でないものとを区別する。  特別で、美しく、愚かな行いだ。  それはきっと、人が人であるためのアイデンティティーなのかもしれない。  そして、彼も祈っている。  明日天気にしておくれと、私に向って祈っている。  晴れればいいな、私は思う。  あの狭い空よりも、私は彼の顔が晴れればいいなと思うのだ。  この雨がやめば、きっと彼は喜ぶ。  彼が喜べば、きっと私も嬉しくなるだろう。  けれど、もしも、雨がやめば。  雨がやめば、用済みになった私は、きっと捨てられる。この窓からも外され、すぐに彼の視界からも外されてしまう。それだけならばまだいい。彼と会えなくなるのは悲しいけれど、それだけならまだ耐えられる。  でも、もし忘れられたら。彼の記憶の片隅にさえ生きられないのなら、私はきっと、とても悲しい。  想像するだけで心が引き裂かれる。紙切れでしかない私の心臓がくしゃくしゃになって消えてしまいそうになる。  だから私は祈る。  人に創られた私に、祈る権利があるのかなんて分からない。     
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