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花火は手を伸ばせばそこまで届きそうな、すぐ目の前で大輪の花となってわたしたちを魅了した。
何発も何発も上がっては咲いて、儚く消えていく。
わぁ……と感動している耳元で「ノリ姉」と聞こえたような気がして賢くんの方を向いた。
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体が固まってしまった。
わたしの目の前にどアップの彼の顔があって、口唇に柔らかいものが触れていて。
何が起きたのか暫く理解できなかった。
柔らかいものが離れていき、それはまた耳元へ移動して「好き」と呟いた。
何秒間固まって、何秒間見つめていただろう。
それが理解できたとき、花火の打ち上げ音よりも大きいんじゃないかと思うくらい、わたしの心臓はバクバクと鳴り出した。
「ひ、ひ、人が見てたかも知れないじゃないっ」
わたしは周りが気になって、キョロキョロとした。
「大丈夫。みんな花火を観てるって」
確かに周りの人たちは皆、空を見上げている。
それにしても彼の不意打ちに、わたしのバクバクは止まらない。
「ノリ姉、もう1かぃ……」
言い終わらないうちに、またわたしの口唇は彼のそれによって塞がれた。
花火はフィナーレを迎えて、夜空は月と星だけを残し瞬いていた。
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