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少し話をして「また明日」と電話を切った。
「賢ちゃんとデートしたって?」
電話を切ったと同時に後ろから声を掛けられた。
びくっとしてスマホを落としそうになった。
振り向くと同期の万由で、「弟から聞いたのよ」とニヤリと微笑まれた。
世間というものは狭いもので、大工王子と万由の弟くんは親友だそう。
二人とも、わたしは参加できなかった週末の会社の飲み会に万由に誘われて来ていたそうだ。
昼食をとる場所へ移動し、万由に「付き合うことになった」と話したら、他の同僚の子たちにも、「おめでとうございまぁす」なんて言われて、コソコソしてるのがバカらしかった。
お互い電話番号が分かったおかげで、無料メッセージアプリのお友だちとなり、毎日のようにやり取りをするようになった。
『おはよう』
『おつかれさま』
『がんばって』
『ありがとう』
『おやすみ』
ありふれた、なんてことないメッセージやスタンプのやり取り。
そして『賢くん』『ノリ姉<ねえ>』と呼び合うようになった。
『ちゅっ』
『好きです』
なんてのも、普段恥ずかしくて言えないことまで送ったりなんかしている、わたしたちは実はまだキスまでたどり着いていない。
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