47人が本棚に入れています
本棚に追加
「花火観に行くんだったら、やっぱり浴衣でしょ」
夕飯が終わって、姉がリビングのローテーブルの上に置いたのは、２着の浴衣と帯。
そして、下駄。
仕事の合間に実家から持ってきたらしい。
「実家に浴衣って置いてあったの？」
わたしは見たことも着たことも記憶にない。
「お母さんのと叔母さんの。むかしむかしの物だけど、綺麗に取ってあったわ。ちょっとレトロな感じでいいと思うの」
一つは、黒ストライプに椿柄、濃ピンクの帯。
もう一つは、ベージュにオレンジ金魚柄、薄緑の帯。
「うん。素敵」
「ノリはどっち着てく？」
「え、お姉ちゃん先に決めてよ」
…………。
「ママきんぎょ。ノリちゃんおはな」
姉とどっちを着ていくか悩んでいると、横から陸都が即決してくれた。
姉と二人、顔を見合わせ微笑んだ。
かわいい甥っ子の仰せの通りに。
「じゃーん！陸都にも甚平があるのでーす。ばぁばが買っといてくれたんだよ」
今度は、姉は陸都に「これを花火の時に着ていこうね」と優しく微笑んでいる。
陸都も「やったぁ」とはしゃいでいた。
最初のコメントを投稿しよう！