第1話 屋根裏部屋

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「あ!これ…もしかして!?」 屋根裏部屋で色んな宝物探しをしていた『やよい』は、 分厚くて大きな本みたいなものを見つけた。 それは木の表紙で、鍵付き。 何やら祖父宅「梅ヶ枝(うめがえだ)家」 の家紋が彫られている。 ちょうどアルバムくらいの大きさで、 とても立派な物だった。 「お祖母ちゃーん」 やよいは階段の下に向かって声をかける。 「はいよー」 祖母のよく通る声が、すぐに返って来た。 何せ彼女は、ここ長野県、 地元のカラオケ大会で優勝の腕前なのだ。 更には、日本舞踊の師範代でもある。 だから足腰がしっかりしていて、姿勢正しく優雅に歩く。 梅ヶ枝家。 長野県では有名な老舗の料理店でもあった。 今はもう、長男夫婦に任せている。 この屋根裏部屋は、 母や母の兄弟達の小さい頃遊んだ玩具や、 人形、塗り絵等、色んな宝物の保管場所でもあった。 やよいのお気に入りの場所の一つでもある。 …話は約3時間程前に遡る… 待ちに待った夏休みがやってきた。 宿題をリュックに詰め込み、忘れ物がないかチェックに勤しむ。 小学校2年生の眞田やよいは、 毎年夏休みは家族全員…つまり両親とやよいで 母方の祖母の家に二週間ほど滞在している。 父親の運転する車で行くのだが、 いつも午前4時くらいに出発する。 混雑を避ける為だ。 ドライブイン、道の駅等に立ち寄り、 車はゆっくり安全運転で進んで行く。 それもまた楽しみの一つだった。 やよいは初孫という事もあり、 祖父泰隆(やすたか)も祖母三千代(みちよ)も、 それはそれは大層可愛がってくれた。
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