0人が本棚に入れています
本棚に追加
それからどれくらいの時間が経過したのか、彩にはもう分からなくなっていたが、最後の花火が空に散ってしばらくすると、いつもの静寂が舞い戻った。
しかし、彩の心は妙にすっきりとしていて、先ほどまでの涙はどこかへと消え去っていた。
「もう、いっか」
いつもの静けさにぽつんと呟くと、それは暗がりへと静かに消えていった。
(疲れちゃった)
ベランダの戸を閉め、スーツのジャケットを脱ぐと携帯電話が鳴った。手に取ると、幸一からの着信だった。先ほどの呟きと、幸一の困ったような表情が脳裏に浮かぶ。
「もしもし?」
『もしもし?さっきはごめん……突然だったから、びっくりしたんだよ。それで、ちゃんと話せないかと思って……』
彩の目に、先ほどの花火がパッと咲いて消えていった。
最初のコメントを投稿しよう!