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「どうかされたんですか?」
結衣が尋ねると、視線をやや斜め上に移動させて逡巡し、
「実は、コレ」
と自分のあごを上げて指差した。そこには、カミソリで傷つけたらしい真新しい傷があった。
「気合の入れすぎで、やってしまいました」
恥ずかしそうにあごをかき、また「いて」の繰り返しに、思わず結衣は笑っていた。
「実は、私も」
足元を指差し、オープントウがちらりと見える指先を動かしてみせる。
「靴擦れです。ハイヒールなんて久しぶりに履いたから……」
弘樹はそれに一瞬きょとんとして、笑った。
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