「こんなことになるなんて」

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「こんなことになるなんて」

からんからん。 「いつものハーブティーでお願いします。」 -- 自家製だというハーブが効いているのか、ここのハーブティーは どれを頼んでも、いつも本当に美味しい。口に含むと、すぐに滑 らかな香りとほのかな渋味が温かに広がって、幸せな気分が内側 から湧いてくる様な気がする。 -- 大通りから一筋それた路地の一角にあるこのカフェ「ひだまり」 は、2年前くらいかな、古い木造の家を改装して作られたらしい 。元の家の構造を上手く利用して作られてて、店内はそう広くは 無いけど中々居心地の良い、柔らかい空間が広がってる。 -- 最初入った時は、田舎のおばあちゃんの家に来たみたいだと思っ たっけ。木の香りが似てたから。 -- カチャリ。ティーカップを手元の受け皿に置く、そんな些細な 音でさえ大きな主張に思える、静かで落ち着いた雰囲気のこの カフェは、近頃すっかりワタシのお気に入りスポット。 -- 一番奥の席で、大好きなショーン・N・シモンズの「こんなこと になるなんて」を読みながらハーブティーを飲む(そしてそうし ている自分の姿に酔う)この時間が最近一番の楽しみ。 -- 「こんなことになるなんて」は、ある街のはずれにある古い喫茶 店で、秘密を抱えたマスターと、とある客の女性があらぬ恋に落 ちる話だ。生憎このカフェのマスターは気のいいおばさんだが、 物語の舞台である喫茶店を連想させる雰囲気がここにはあり、そ れがこのカフェを気に入っている理由でもあった。 -- ※作中の登場人物名、団体名等は全て架空のものです
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