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「アルバムの写真。もう一回見たい?」
「え、まぁ、そりゃあ見れたらいいな。って思うけど。」
「よし、じゃあ脱け出そっか。思い出屋さん、おいで?」
そのまま、佐藤くんに腕を引かれて、同窓会を抜け出した。
「ここだよ。思い出屋さん。さぁ、入って。」
「……普通の建物だね…」
「うん。そりゃあね。」
中に2人で入る。
「そこ、座って。今なんか持ってくるから。」
「うん。」
椅子に座って、佐藤くんが来るのを待つ。佐藤くん、下の名前なんだっけ。徹?だっけ。司だっけ…?
「はい、お待たせ。」
「あ、ありがと。」
そう言いながら振り返った瞬間、唇が暖かくなった。
「……ぇ」
「ほんとに、俺のこと、覚えてない?」
「………、りょ、涼……、涼……。そうだ、涼だ……」
「うん。そうだよ。涼だよ。」
佐藤涼。私の恋人で、もう、婚約してて…。
そうだ。あと数週間で、同棲始めるって時に、火事だったんだ…。
「ぇ、けど、なんで…」
「思い出屋さんだから。」
そう言って微笑む涼。
涼は、火事の時に死んだんだ。お気に入りだった本に火が引火して、そうだ、そうだ……。思い出した………。
「俺のこと、忘れた方が幸せになれるだろうな。って思ってたんだ、けど、けど、やっぱり願望には勝てないや。」
「がん、ぼう……?」
「うん。もう一回だけ、もう一回だけ、優とキスすること。」
3秒間、唇が暖かくて、そのあとの記憶は無くって。
「ねぇ、いつまでに優結婚したいとかないの?」
「うーん……ないかな……。天国で、待ってる人がいるしね。」
私は、、もう一回抱きしめあいたいな。
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