24話 境界線〈end〉

3/3
前へ
/42ページ
次へ
「いいか、西倉。日本どころか世界へ行けるくらいに、キミには未来がある。例え卒業して付き合っても、できる限り人目を避ける必要があるだろうし、楽しい恋愛なんて出来ないかもしれない。男と付き合う事は障害にしか―――」 「大丈夫だ、先生。」 必死で話していると、ぎゅうぎゅうに握りしめていた瞬の手が、ふわっと温かくなった。上から、西倉の手が重ねられたのだ。 「オレだって、何にも考えてない訳じゃないって。普通のヤツから見れば男同士が、キモいって思われるのも、コソコソしなくちゃいけねえのも分かってる。でもな、先生といられるなら、オレは何でもいい。色々不自由があっても、先生と一緒にいれたらきっと幸せだ。」 西倉がニッと笑い得意気に言い放つ。 根拠など何もない。 ただの願望だ。 でも、バカみたいに楽天家の西倉に呆れたのか、それとも重ねられた手の温度に安心したのか、瞬の肩からゆるゆると緊張が解けていく。 我ながら単純だ。 もういいかな―――と、思う。 「まあ、最悪バレても、平気で跳ね返すくらいになってみせる。だって、オレ、天才だし。」 「ばか、調子に乗るな。」 どこまでも強気な西倉に、瞬は呆れ半分で笑った。もう半分は憧れにも似たような気持ちが沸いてくる。 ダメになる事を心配するより、ダメにならないように頑張ってみたい。そう、単純に思った。 ―――あ~あ、信じられないな。 何だか、意固地になっていた自分がおかしくなってきた。西倉を言い伏せる気でいたのに、何故か反対に瞬が説得されてしまっている。 負けた気がしないでもない。少し悔しくて、とても嬉しい。 「仕方ないから、予約されてあげるよ。」 ふふん―――と、瞬が偉そうに笑うと、西倉の腕の中に包まれた。ぎゅうっと抱き潰さんとする勢いで抱きつかれ、堪らず西倉の背中を叩きながら、瞬は思う。 この恋を全力で守ってみようじゃないか。馬鹿みたいに、好きだと訴えるこの胸に誓って―――。 End.
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

320人が本棚に入れています
本棚に追加