22話 Birthday

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やはり日吉の事は何となく後ろめたい。 「いや、高木先生じゃない。昔の知り合い。」 瞬がぼんやりとした言い方をすると、西倉がひょいっと片眉を上げる。 「ふぅん。気になるけど、いいや。」 地面に置いてあったスポーツバッグを漁りはじめた西倉の頭を、瞬はぼんやりと見下ろした。 先週もそうだった。 何かを悟ったのか、深くは追究して来なかった。物わかりの良い、その態度は西倉の性格からすると違和感を覚える。 しかし、西倉から小さめの袋を差し出されて、考えが霧散した。 「先生、これ。」 「―――何?」 「誕生日、今日なんでしょ?だから、プレゼント。1番に祝いたかった。」 西倉が照れた顔で言いながら立ち上がり、ズイッとプレゼントなる袋を瞬に突き付けてきた。思わず受けとると、西倉の顔が嬉しそうに綻ぶ。 「はっぴーばーすでい、先生。」 ぶわわっ―――と、胸に何かが広がった。 衝撃の大きさに呻きそうになる。服の上から胸を押さえたが、治まる様子もなく混乱が増す。 とても苦しい。 息ができないくらい苦しい。 でも、理由が分からない。頭の中で、ひらがな発音の西倉の言葉がリフレインする。 視界が揺らめきそうになって、瞬はやっと自分の気持ちを自覚した。 ―――あ、そうか、分かった。オレ、バカじゃないか。 単に、嬉しかったのだ。 西倉が誕生日を覚えていてくれて、息が詰まるくらいに嬉しいのだ。 ―――こんなに好きになっていたなんて。 西倉の顔を見上げながら、止まらぬ予感に瞬は立ち尽くした。
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