一章:文字通り攻略不可能

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一章:文字通り攻略不可能

---Opening--- 『第四設定世界:廻星のアリス』 我々が生きる地球という世界を圧縮した上で”魔法”というエッセンスを加えた星が舞台となる仮想世界だ。 数年前に突如世界の諸所に出現した異界に繋がる巨大な門――通称、ゲート。その先には常闇の異界が広がっていた。 異界の住人は、普通の感性をしていれば総じて不快を催す異形をしている。害悪に対する潜在的な嫌悪感が働いているのだろう。 彼等は、人々が平和な営みを築く星を破壊せんとする侵略者だった。 むざむざと隣人の生命を明け渡してやるわけにはいかない。人々は知識と才能を集めて、彼等に対抗する為の戦力を養成する学校を立ち上げた。 プレイヤー達は、その学校の栄えある生徒として活動していく事になる。 ――正規のシナリオにおいて。 執行部が先導する義勇兵達は、星が見立てた『五人の守護者』と共に数々の困難を乗り越えた果てに、ついに敵の首魁となる魔王を討ち取った。 そして、そこでシナリオは唐突に終焉を迎えている。 世界が平和を取り戻したのかも分からぬまま。 ぷっつりと、まるで電源でも落ちたように。 学園長曰く、それは仕様であったという。 「全ての謎の答えは『強化シナリオ』のエンディングに至れば氷解するだろう! そこまで辿り着けるかどうかが問題だがなっ!」 執行部の会議室で行われた一幕は、彼等の闘争心を大いに煽った。 意気軒昂と臨んだ”一周目”は、彼等に嘗て無い高揚と衝撃を与える。 ――『強化シナリオ』は彼等を正真正銘『非現実世界の住人』に変えた。 彼等は地球の某ではなく、廻星のアリスの某になっていたのだ。 けれど、それは同時に彼等から視点が一つ奪われた事に他ならなかった。 端的に言うなれば、正規シナリオでは多くの栄光の場面に出演していた彼等の大部分が”脇役”と成り果ててしまった。 その結果、正規シナリオの締め括りよりも呆気ない最後を迎えてしまう。 何も守れず、何も救えず。非の打ち所のない程の悲劇が紡がれた。 少し賢い者なら、この時点で気付いている。考え至らなかった者も、二周目を始めれば否応にも理解するだろう。 この驚天動地の技術が用いられた仕組みに隠された致命的な破綻と、学園長が残した言葉の本当の意味に。 クエストNo.00『第四設定世界:廻星のアリスのハッピーエンドに至れ』 ---Start---
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